ハウルの動く城

あまり宣伝をしていないので、少し心配だったのですが、妹が2回も見に行くほど面白かったというし、割引券まで送ってもらったので、歌舞伎町まで見に行きました。
で、一言でいうと。面白かったです。DVDも買います(いつ出るのか知りませんが)。

  • 内容

宮崎監督にしては珍しく、恋愛を前面に出した、それも一目惚れから始まるラブストーリーです(あれ、ラピュタもか?)。冒頭でソフィー*1を自分の追っ手に巻き込む形になってしまったハウル*2が、魔法で一緒に空中へ逃れるところがあるのですが、それがもうエレガント!の一言。追われているとは思えないほど優雅に、驚き戸惑っていたソフィーまで楽しくなるような空中散歩。ソフィーが元々向かっていたお店のベランダに降ろす時も、衝撃がこないようふぅわりと優しく。ソフィーがハウルに惹かれるのと同時に、見ている自分も一気に映画に引き込まれました。やっぱり魅せ方が上手いですね、宮崎監督は。
ソフィーの母親は継母で結構若く、妹もそんな感じで、社交的で交友関係は広いけど、という”知新”だけの存在(決して悪くはないけど)。対してソフィーは長男長女にありがちな真面目系。帽子屋を継ぎ、”温故”でありたいと思うけど、既に父祖父母などの導き手がいない(亡くなっている)状態で、立場的にも精神的にも立ち往生している、そんな女の子(という脳内設定です)。
日々ルーチンワークをこなし、無為に過ぎていく毎日に、ネガティブ思考に陥っていた18歳のソフィーですが、”荒地の魔女”に掛けられた呪いで90歳にされるてしまいます(これが彼女の転機となるわけですが)。人生悪いことばかりじゃない、失うものが少ないお婆ちゃんだからこそ持っている”生きる知恵”と”バイタリティ”を得て、“動く城”での生活を手に入れ、掃除・洗濯・料理をこなし、子供*3や老人*4の世話をし、そんなソフィーを慕って、案山子*5や火の悪魔*6、犬*7と味方も増え、心身共にポジティブ思考へ変わっていく姿が、楽しく、嬉しく、そして美しい。それはまさしく温故知新の体現です。かつて自分一人が生きていく為の”作業”だったものが、”誰か”を内(家)に含むことで意味を成し、一緒に生きる為の”行動”となっていく過程は”家族”を構築する作業そのものです。時に失敗して*8後悔したとしても、想いはちゃんと届き、相手もそれに答えようとする。そしてハッピーエンド。ていうかラブアンドピース。うんうん、物語はこうでなくっちゃ。
多少詰め込みすぎたかなとか(”一目惚れ”が”好き”になっていく過程とか)、感情の切換が早すぎかな(ソフィーが泣いているところとか)、と思う箇所もありますが、それはもう“愛”と“好き”の言葉でどうとでもなっちゃうものなのです(笑)。

  • 戦争

戦争に対してのアンチテーゼですが、特に深くは考えませんでした。あくまで二人の愛に対する障害程度に見た方が、気を楽にして見ることができるかと思います。例えば、戦場へ向かう軍艦を見て、敵か味方かを問うソフィーに対し、「どっちでも同じだ」とハウルは答えるのですが、それは確かに一般的な戦争に対する批判の一つであるかもしれません。でも自分には、強大な魔法力を持ちながら、無為な生活を送ってはいても、抗う力もなく翻弄されるしかない”力”の無い一般人、つまりソフィーと同じ立場で心を共有できる感性を備えた青年、ということを示しているのだと、捉えます。それゆえ、後にハウルが魔に囚われたとしても、ソフィーが見誤ることが無い限り、大丈夫なのだという伏線なのかもです(と、今思いつきました(笑))。だから、ね?あまり戦争は関係ないでしょ?なので、戦争について考えたことの無い人はきっかけ程度に、それ以外の人はスルー、もしくは別視点で解釈して楽しむ要素だと思っています。

  • 声優

ハウル役のキムタクの演技(ハウルね)が上手かった!事前にキャスティングを知っていたのに、いつもの揮発性記憶の発動ですっかり忘れていて(いつでも新鮮。便利だねえ)、「うお!?この涼やかな声は誰だ?すげえ合ってる!」と真剣に感心してしまったくらい上手いです。
ソフィー役の倍賞千恵子さんも、18才と90歳、どちらの声も合っていて素晴らしい。宮崎監督の、特に女性キャラの典型的な台詞回しに、ちゃんと合っているんだもんなー。驚きです。
マルクルは”千と千尋”の”ぼう”です。面白くて可愛いです。買い物をするソフィーに「ジャガイモが嫌いじゃ」「魚が嫌いじゃ」というシーンには笑ってしまいました。美輪さんは言うまでもなく、こういう役をやらせたら誰も勝てないわけで、言うことないです。
普通、役者起用の声優さんって、最初自分が持っていたイメージに合わせたり、慣れたりするのに時間が掛かるんですけど、”ハウルの動く城”はなんの抵抗もなく、するりと耳に入ってきたので声優の点からも自分内評価が高いです。
というわけで、色々なモノの詰まったハウルの動く城。言葉足らずでちっとも面白さを表現できていないかもしれませんが、ちょびっと幸せな気分を味わいたい、楽しい気分を味わいたい、という方には充分楽しめると思います。ぜひぜひ映画館まで足を運んでみてください。

*1:ヒロイン。本編の主人公。18→90歳にされてまう人

*2:美青年天才魔法使い。

*3:マルクルハウルの弟子。かわいい!

*4:荒地の魔女美輪明宏しかありえない

*5:映画の最後で正体がわかります。戦争のきっかけでもあったのかなーとか推理してみたり。

*6:カルシファー

*7:ヒン。ケンケンみたい(笑)。

*8:ソフィーはするのです。そいえば魔女宅もそんな感じでしたか。