• 漫画
    • EXIT 9 (バーズコミックス ガールズコレクション)

続刊を楽しみにしている漫画の一つ。掲載紙が変わったり、無くなったりで、自分の中では"タモリ倶楽部*1"的境遇の漫画。もっと定期的に掲載できる会社は無いものか。こんなにも面白いのに。もったいない。
 歌なんてものは、実際に声を出す方が遙かに好きなので、バンド漫画なんて全然読まないのですが、この漫画だけは(自分にとっては)別格。イメージアルバムがあったりとか、作中に延々と歌詞が用意されているとか、そういった直接的表現は一切ありません。でも「少年の作る歌にもバラードっぽいものが?」とか「ギターの腕があがってんなー」といったイメージが鮮明に伝わってくるのです。
 たぶんそれはこの漫画におけるミュージシャンが、完全に「他人に評価される立場」で描かれているからだと思います。”主人公達とファン”というありがちな視点だけでなく、評論家や所属事務所の社長や担当、音楽雑誌の記者やラジオのパーソナリティ、他のミュージシャンや目標にしていたバンド、etc。主人公達以外の登場人物の心情が多種多様(言葉だったり態度だったり)に描かれ、それらが読み手と同一化することで、主人公達のバンド”VANCA”があたかも存在するかのような、そして段々とレベルが上がっているような錯覚に捕らわれるのです。
 作中、1stアルバムに(不本意にも)付けられてしまった”だせぇキャッチコピー”「ラスト・パンク・ヒーロー」。今思えば、苦難のバンド結成、苦難のアルバム作成*2、苦難のライブハウス巡り、苦難の事務所移籍*3等に対する彼らの奮闘っぷりからすると、まさしく困難に立ち向かいながら経験値を上げていくヒーローという点では、未来を的確に暗示したコピーだったんだなあと。彼らにとっては不本意でしょうけど(笑)。
 今巻の見所は、複合の野外コンサートで、参加したバンドがポジションを取り合って奏でるフィナーレ。「ESK*4」と、それに憧れていた*5「VANCA」が雨の中で競演、というか音で戦うシーンは圧巻の一言。台詞も無く描写だけでそれが伝わるというのはひとえに作者の力量ゆえでしょう。VANCAメンバーの出す音にハッとなり、負けじと演奏するESKメンバー、というトップの斜陽を匂わす絶妙な演出もナイス。是非御一読を。

*1:流浪の番組と呼ばれている

*2:1枚目は事務所のいいなり、2枚目は理解ある担当に恵まれるも、その事務所が吸収合併(それもされる側)。

*3:辞めて移って辞めて自分たちで作って移って

*4:作中すでに頂点に立っているバンド。売り出し方が良かったせいか、特に苦労なく?トップに収まったよう。天才肌だが喉の弱いVoのせいで、バンド内の人間関係はぎくしゃくしている

*5:といってもVoの主人公だけ、かな?